「モザイクは復元できる」という話を見たことがあるかもしれません。条件によっては、ある程度まで推定できます。ただし「どんなモザイクでも元通りになる」わけではありません。何が戻せて何が戻せないのかを整理します。

前提:情報は実際に失われている

ピクセレートは、タイルの中の画素を平均して1色にします。100個の画素が1色になった時点で、元の100個の値そのものは失われています。これは元に戻せません。

にもかかわらず「復元」ができるように見えるのは、失われた情報を外側から補っているからです。補い方は大きく2通りあります。

復元が成り立つ2つの筋道

1. 元の候補が限られている場合(総当たり)

隠された内容の候補が数えられるほど少ないとき、候補を片端からモザイク化して、結果を突き合わせることで特定できます。

典型的なのは文字です。同じフォント・同じ文字サイズで書かれた数字やアルファベットは、取りうるパターンが限られています。同じ処理をかけて一致するものを探せば、元の文字が分かります。この手法を実装した公開ツールも存在します。

つまり、モザイクをかけた文字列(口座番号、住所、メールアドレス、ナンバープレートの数字)は危険です。ナンバープレートについては動画で隠す方法で詳しく説明しています。

2. 「それらしい絵」を作り出す場合(推定)

顔などは候補を数え上げられません。この場合は、大量の画像を学習したモデルがモザイクと矛盾しない顔を作り出します

ここで重要なのは、出てくる顔は推定であって、元の人物である保証はないという点です。同じモザイクから矛盾なく生成できる顔は無数にあります。生成された顔は本人確認の証拠にはなりません。

ただし、その人物を知っている人が見れば特定できてしまう可能性はあります。「証拠にならない」ことと「安全である」ことは別です。

何が復元しやすさを決めるか

条件 復元しやすい 復元しにくい
タイルの粗さ 細かい(弱) 粗い(強)
隠した対象 文字・数字・記号 複雑な形
対象の面積 小さい(タイル数が少ない) 大きい
隠し方 ぼかし 塗り重ね(スタンプ)
場面数 動画で長く映っている 一瞬だけ

動画は静止画より不利な点に注意してください。同じ対象が数百コマにわたって映っていると、少しずつ違う条件のモザイクが大量に手に入ります。それらを合わせると、1枚だけの場合より手がかりが増えます。

ぼかしはモザイクより戻しやすい

ぼかしは、周囲の画素を混ぜる処理です。混ぜ方が一定なら、数学的にはその逆をたどることができます(デコンボリューション)。

実際にはノイズや圧縮の影響で完全には戻りませんが、輪郭の形が残っているぶん、ピクセレートより手がかりが多いのは確かです。自然に見せたい場面では有用ですが、確実に隠したい対象には向きません。

確実に隠すには

  1. スタンプで覆う。 上から別の画像を重ねるので、覆った範囲の情報は残りません。最も確実です。
  2. ピクセレートの「強」を使う。 タイルが粗いほど、失われる情報が増えます。
  3. 文字は特に強く隠す。 総当たりが効く相手なので、弱いモザイクは意味を持ちません。
  4. 範囲を広めに取る。 対象の端が見えていると、そこから内側を推測されます。

強さの設定についてはモザイクの強さの選び方、隠し方の種類についてはピクセレート・ぼかし・スタンプの違いで詳しく説明しています。

一番の問題は「隠し忘れ」

復元技術を心配する前に、確認してほしいことがあります。そもそも隠せていないコマがないかです。

実際の事故の多くは、高度な復元ではなく、単純な隠し漏れによるものです。動きの速い場面、対象が一部しか映っていない場面、画面の端に一瞬入り込んだ場面。AIの検出も人の手作業も、ここを取りこぼします。

書き出したファイルは、公開前に必ず通しで確認してください。手順は公開前に隠し漏れを見つける手順にまとめています。

まとめ